水耕トマトの生長過多・樹が暴れる・樹ボケ・樹勢が強すぎるについて ハイポニカの考え方
土で栽培しているトマトは、肥料をあげすぎると茎が太くなって実があまりつかない・・・とおじいちゃんが言っていました。水耕栽培では、ずっと肥料が溶けているような液に浸かっていても、肥料をあげすぎのような状態にならないのはどうしてですか?
トマトは肥料が多いと
「生長過多(せいちょうかた)」
「樹が暴れる」
「樹勢が強すぎる」
「樹ボケ(きぼけ)」
という症状になり実がつかなくなると言われています。
これっていけないことなのでしょうか?
ハイポニカでは植物の立場になって考えてみました。
まずは土と水耕栽培はどう違うのか?
土のトマト君は水や肥料をもらえたり、欠乏したり、またもらえたりの状態を繰り返しています。
土の根の表面で何が起こっているか?
①根の表面に密着している水、栄養分は根から吸収することができます。
②しかし、根から数ミリでも離れたところにある水や栄養分はたとえ土の中にあったとしても根から吸収することができません。
③そこで上から水を与えます。そうすると土の中にある水や栄養分が根の表面に移動し、
④吸収することができる状態になるのです。
根の表面ではこの様な欠乏状態と供給状態を繰り返しています。
土の栽培でこまめな散水が良いとされているのはこれが理由なのです。
これは、土栽培に限らず養液土耕、固形培地栽培、非流動型の水耕栽培においても同じ現象が起こっています。
水耕栽培、特にハイポニカのような循環型の水耕栽培は常に水と肥料が根の表面を循環していて、
植物が水や肥料を吸っても吸っても次々水や肥料がもらえる仕組みになっています。
このようの環境の違いでトマト君はどう思ってるでしょう?
土のトマト君
「次にいつ水がもらえるんだろう?」
「肥料も次はいつもらえるんだろう?」
「次にいつもらえるのか確証がないから、
あまり体を大きくし過ぎると水や肥料がもらえなかった時に困るから、
ほどほどの生長にしておこう。」
「それと僕がいつ枯れてもトマトがなくならないように、
種を作って次の世代に託す準備をしておこう!」
だから花を咲かせ、実を付けようとします。
では水や肥料がたっぷりもらえる水耕栽培のトマト君はどう思ってるでしょうか?
「水も肥料もいくら吸っても次々もらえるよ!」
「これなら安心して大きくなっても大丈夫だな。」
「どんどん枝葉を伸ばして大きくなろう!」
では大きくなろうと決めた水耕栽培のトマト君は実を付けないでしょうか?
いいえ、枝葉を大きくしながら実もつけます。
ただ次の世代を残すことに切羽詰った土栽培のトマト君に比べると
実をつけることには必死ではありません。
だから花が咲いても実がつきにくかったりします。
※同じ苗を土に植えたのと、水耕栽培に植えたのでは土の方が実の付きがよかったという事例はあります。その場合ホルモン剤(トマトトーン)を利用して着果させましょう。
ここで注意してほしいことがあります。
水耕栽培のトマト君は元気モリモリ!
いっぱい枝葉を伸ばそうとしています。
なのに通常の栽培方法同様脇芽を取ってしまうとその元気のやり場がなくバランスを崩してしまいます。
そういった状態の時に異常主茎(いじょうしゅけい)とか鬼花(おにばな)といった状態になります。
異常主茎は茎が下の画像のように茎の間に穴が空いたような状態になったり、
生長点が花芽になってしまったり、症状はいろいろあります。
茎の真ん中が少し空いているでしょう?分かるかな?
また、花房の先に葉や生長点が出てくるのも「若返り」と言われる樹勢過多の症状のひとつです。
こうなった場合は生長の勢いが強い状態なので、脇芽をかくのをやめて、
トマトが伸びたいように多くの芽を伸ばしてやると樹の生長の勢いが分散されて大人しくなってきます。
そして鬼花はこれ。
ひまわりみたいに花弁が多い花でしょう?
下記が普通のトマトの花。違い分かるかな?
鬼花も生長の勢いが強い時に花が乱れる状態で、この花で実ったトマトは丸いトマトではなく、大きくて楕円形でごつごつした実になります。
こんな実。
この花や実も脇芽を伸ばしてそこに咲く花の実を結実させていけば生長の勢いが次第に落ち着き、普通の花や実の形になっていきます。
ですが出荷する農家さんにとってはこのような実は大きすぎるし形が悪いため売り物になりません。
だから最初に着く実から鬼花が咲いたりしてほしくないんです。
農家さんにとっては収入に影響することです。
トマト君にはスッと大人しくスリムに育ってもらえた方が手入れがしやすいんです。
とても大切なことです。
だから農家さんは1本の樹に栄養を与えすぎるのではなく、ほどほどのバランスを保って、
トマトの生長を上手に管理して同じような大きさで形のいいトマトを収穫する方法をとっています。
水耕栽培ハイポニカで育てたトマト君はどうか?
最初は勢いが強すぎます。鬼花も実をつけますが、枝葉をどんどん伸びたいように伸ばして、その勢いを沢山実にします。
最終的には1本のトマトからたくさんの実を収穫するようになります。
家庭でトマト栽培を楽しむのであれば、このトマト君の生長の勢いをそのままに楽しんでもらいたいです。
暴れるとか樹勢が強すぎるとか言われたりしますが、それは元気な証拠。
無理に人間が制御する必要はないと思うのです。
また、この鬼花でできた乱形果のトマト、家庭でトマト栽培を楽しむにあたっては何が悪いんでしょう?
じつはこの鬼花からできた大きくて楕円形でごつごつのトマト、とってもおいしいんです。
甘いとかそいう基準ではなく、何て言ったらいいでしょうね、元気いっぱいなおいしさ。
私はこの鬼花のトマトが大好きです。
水耕栽培であれば是非トマト君の生長の勢いとその元気なトマトの味を楽しんでいただきたいと思います。
気温が低くて、根の状態が良すぎる時もこのように樹勢が強い、暴れる状態になります。
これも、気温が高くなり、実がついて樹にそれなりに負担が増えてくると、強すぎる樹勢もおとなしくなってきます。
家庭菜園で水耕栽培を楽しむなら、そんな元気すぎるトマトの樹も水耕栽培の特徴として楽しんでみてください。
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ですのでご質問は当店とってとてもありがたい情報です。
是非お気軽にお問い合わせくださいね。
水耕栽培と言っても簡単な自作水耕からハイポニカまでいろいろですから、お迷いの方は以下をご参照ださいね。
ホームハイポニカシリーズの比較はこちら
早速ご質問の件ですが
> 1)農業用の写真では、トマトの剪定を行っているようにも見えるのですが、どの程度行っているのですか? 一本仕立て、摘心など。また家庭用の放任では風通しが悪くなるのでは
農業用ハイポニカの栽培には縦型栽培と水平栽培の2種類に分かれます。
縦型栽培の場合は、一般的な土栽培同様に1つの栽培槽に14~20本の株を定植し、1本仕立てにして栽培します。
脇芽を取って1本に仕立てます。
ですが、ハイポニカの場合樹があばれやすく、1本仕立てにすると乱形果ができたりします。
もう一方の水平栽培の場合、農業用として使用する場合でも基本的に脇芽の剪定はほぼしていません。
ですが、棚に枝葉が重なるとハウス栽培の場合は灰色カビ病や葉カビ、トマトサビダニ、オンシツコナジラミなどが多発するため、重なって光が当たらない葉は葉かきをしています。
家庭菜園の場合は、ハイポニカで1本仕立てにすると暴れやすいため、脇芽は伸ばしてもらっています。
ただ、伸ばし放題にするとご指摘の通り風通しが悪くなり、病気や虫が発生しやすくなります。
理想を言えば、混み過ぎないように適当には脇芽を取って空いてもらうのがいいのですが、何番目のどの脇芽を取るのような説明をしにくいこともあり、家庭菜園の利用では基本的に脇芽を放置してもらっています。
確かに風通しの悪さで悪影響はありますが、こまめに混みすぎを防いで脇芽を取っても、家庭菜園では結局病害虫を発生させてしまいます。
完全に防ぐのは難しいこともあり、それならば、初期に伸ばせるだけ伸ばし、実をたくさんつけて、収穫してしまう方が楽しんでいただけることから、脇芽を取ることをあえておすすめしていません。
ですが、家庭菜園でのハイポニカ栽培のベテランさんの中には春から冬にかけて長期栽培されている方もいらっしゃいます。
そう言った方にはダニ類の多発を防ぐ目的である程度混みすぎないように脇芽を適当に取ってもらっています。
以下の記事もご参照ください
http://suikouqa.blog.fc2.com/blog-entry-31.html
> 2)糖度向上を目的に、潅水管理の水分ストレス法を聞きますが、これの対応や必要性は如何でしょうか?
こちらも一度記事にしようと思いつつも説明が難しいこともあってちゃんとした記事にできないでいます。
土の栽培では糖度向上目的に潅水管理をし、水分ストレスをかけます。
根が水にたっぷり浸かった状態のハイポニカ栽培においては、肥料濃度をあげることで水分ストレスをかけ、糖度向上させる栽培方法があり、実際の農業の水耕栽培の現場ではすでに行われています。
ただ、その方法は土の栽培でも水耕栽培でもストレスをかけて栽培することになる訳で、場合によっては植物が枯れてしまったり、極端に弱って実がつかないこともあります。
逆にストレスのかけ方を優しくすると、思ったようなストレスがかからず、中途半端な糖度上昇になる場合もあります。
これは単純に「肥料濃度を何倍にすれば糖度がこれだけ上がる!」と言ったものではなく、植物の生育段階、地域、季節、気候、品種、その時の植物の状態などたくさんの条件によって、どの程度の肥料濃度にするかは変わるので、安易に紹介できる栽培ではありません。
そのため基本的には当方のお客様である家庭菜園の水耕栽培においてはおすすめしません。
水分ストレスをかけて甘くすることは技術としてありますが、それよりも、健康に元気に育てて、太陽の光に当てて育ててやれば、十分美味しいトマトを収穫することができるからです。
ストレスをかけることで甘いトマトを取ることができるかもしれませんが、樹が弱ったり、実の数が減ったり、病害虫被害を激しくしたり、寿命を短くしてしまったりするのは家庭菜園の目的からは離れる気がしています。
元気に健康に育った美味しさを味わってもらいたいと思っております。
ご質問はお気軽にお寄せください。
皆様のご質問は潜在的な多くの家庭菜園ユーザーのご質問だと思っております。
記事にして多くの方に参考にしてもらえるよう、ご質問は今後のブログ記事に役立てたいと思っております。
今後共、当サイトをご愛顧いただきますようお願いいたします。
栽培方法は5号鉢位のザルに排水口用の
生ゴミ袋をかけ、ヤシガラ繊維とバーミキュライトを
混ぜた培地でそれをトレーに入れて
液肥を5cmほど入れて浸しています。
使用しているのは家庭園芸専用ハイポニカです。
栽培し始めてから脇芽は取っていません。
樹高は1m20cmほど、主幹はそれほど太くはなく
暴れていますが花芽も沢山着き、実もなっています。
ただ、葉が内側に巻くのと葉自体に
あまり元気がないのが気になります。
色々調べたら肥料過多との事
水耕栽培で肥料過多なんてあるんでしょうか?
どう対処したらいいでしょうか
水耕栽培では肥料過多になりやすいと言われています。
また、今の時期に1.2mということは冬越しで室内かハウス内で育てていらしゃるのだと思います。
水耕栽培に限らず、寒い時期の栽培は樹勢が強くなりすぎる傾向にあります。
ですが、この記事にも記載させていただいている通り、家庭菜園においては肥料過多は大きな問題ではないと思っています。
樹勢が強すぎて着果しないのは困りますが、きちんと着果もしているようですし、実がたくさんついて、気温が上がってくれば自然に樹勢は落ち着いてきます。
このまま様子を見て楽しんでいただければと思います。
比較することはできないですが、もし、現時点で一般的に理想とされる樹勢のトマトと紫の女王様の育てているトマトが同じ条件であったとしたら、今後の生育は、現時点で樹勢が強めで育っている紫の女王様の育てているトマトの方がこの先も弱らず生育して、たくさんの実をつけてくれると思います。
肥料過多、樹勢が強すぎるということをマイナスだととらえず、元気に育ってくれていると良い方にとらえてもらえればと思います。
> フルティカの脇芽で2株の水耕栽培をしています。
> 栽培方法は5号鉢位のザルに排水口用の
> 生ゴミ袋をかけ、ヤシガラ繊維とバーミキュライトを
> 混ぜた培地でそれをトレーに入れて
> 液肥を5cmほど入れて浸しています。
>
> 使用しているのは家庭園芸専用ハイポニカです。
>
> 栽培し始めてから脇芽は取っていません。
> 樹高は1m20cmほど、主幹はそれほど太くはなく
> 暴れていますが花芽も沢山着き、実もなっています。
>
> ただ、葉が内側に巻くのと葉自体に
> あまり元気がないのが気になります。
>
> 色々調べたら肥料過多との事
>
> 水耕栽培で肥料過多なんてあるんでしょうか?
> どう対処したらいいでしょうか